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私の舞姫論「現代の若者豊太郎説 」
Posted 01/15/2018 10:23AM

松尾光舟

 百年以上前に書かれた作品の登場人物である太田豊太郎の人物像が、現代の若者と非常に似通っている。その理由を、根拠を踏まえて、考察する。 

   まず、現代の若者も豊太郎も「自分のプライベート (自分の世界) を守りたがる」という点である。ドイツに留学した豊太郎は、留学仲間とビールを飲んだりビリヤードをしたりすることは無かった。それは、豊太郎が人と深く関わることを恐れ、また自分のプライベートを守ろうとしていたからだ。そして、それは現代の若者も同じである。一昔前ならば、電車内で初対面の人と交流したり、旅行先で初対面の人と知り合ったりすることがあったというが、現在ではそれは全くない。若者たちは電車内で携帯と常に対話しており、旅行先等でも他人と混じることは一切ない。要は自分のプライベートを守ろうとしている。この点が非常に豊太郎と現代の若者が似通っている。
   次に、「非常にどっちつかずである」ということだ。作中で豊太郎は愛した女であるエリスと、大臣から任される仕事や友人である相沢との関係のどちらかを選ぶことはできず、また選ぼうともしなかった。その、非常に中途半端な様が、現代の若者と瓜二つなのである。現代の若者は常に様々なものを天秤にかけ、選べずにいる。時代が便利で豊かになるにつれ、様々なことに対する選択肢が増えた。それに伴い、なにか一つのことに没頭したり、一つのことだけに集中するために、取捨選択をすることなどができなくなった。結局さまざなことが中途半端なまま大人になる若者が増えている。この様子が非常に似通っている。
   最後に、「口だけは達者である」ことだ。豊太郎は作中で何度も見栄を張り、嘘をつき、人を騙している。友人である相沢にはエリスとは別れるというが結局別れる気もなく、有名になるというが結局行動が伴わない。要するに口だけ達者なのである。これが現代の若者にも当てはまる。先輩や上司の前でいい顔をするために、理解していないのに「わかりました」と答えたり、目標だけ語って努力しない人が大勢いる。口だけ達者な点が非常に似通っている。
   以上のように、自分のプライベートを守りたがり、どっちつかずであり、口だけは達者である、という3つの理由から、『舞姫』の太田豊太郎という人物と現代の若者が非常に似通っている。

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