News and Events

私の舞姫論「舞姫という概念」
Posted 01/15/2018 11:42AM

前川 活

   森鴎外はなぜ『舞姫』というタイトルをつけたのだろうか。舞姫とは一体なんなのだろうか。想像からすると美しく舞うお姫様、だが『舞姫』に出てくるエリスは、貧乏で教養もなく、最後にはパラノイアに侵され、狂ってしまう。姫と呼べるものなのか、疑わしい。森鴎外は何を考え、『舞姫』というタイトルをつけたのだろうか。私が考えるに、舞姫は、一時の幸せののちに、エリスを代表とした、この短編小説のキャラクター達に降りかかる不幸な出来事のことを言う。

   豊太郎はエリスと初めて会った時に、エリスを姫のように美しく思い、一目惚れする。がしかし、そのエリスのせいで関係を誤解され、免官をされ、日本にもその恥が知れてしまう。その影響で母が死に、相沢という旧友に助けられるも自分の優柔不断さのあまり、ことはこじれエリスに迷惑をかけ、そのエリスにも最終的に憎まれ狂わせてしまう。エリスにも同じような不幸が訪れている。豊太郎によって身体を売らなければいけない状況から助けられ、語学を教えられ、豊太郎に恋をする。そのおかげで、貧しくも幸せな豊太郎との暮らしに満足していた。幸せだと思いきや、豊太郎に隠し事をされ、最後には豊太郎に騙され倒れて、精神が狂ってしまう。よくよく考えれば、豊太郎の母にも同じようなことが言える。彼女には豊太郎が誇りだった。エリートとして海外派遣されたその誇らしく、唯一の頼りだった息子が女遊びという最悪の恥晒しになり、免官される。どん底に突き落とされた彼女は、自害してしまう。

   豊太郎にとって出会った当初の、美しい踊り子だったエリスは、間違いなく「舞姫」だった。だがエリスを知るに連れ、エリスは姫のような人ではないことが明らかになっていく。このように良いように思えたことや幸せに思えた生活は、話が進むにつれ、悪化していく。舞姫とは、言わば、負の概念である。その概念に豊太郎達は侵され、ことごとく不幸になっていったのだ。

Footer Logo Image

All images © 2013-2017 Keio Academy of New York

Address/Telephone

3 College Road
Purchase, NY 10577 USA
Phone: (914) 694-4825

Stay Connected

powered by finalsite