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私の舞姫論「森鴎外は作品を精神病で片づけてもよかったのか」
Posted 01/15/2018 11:25AM

 稲荷 良太

 『舞姫』は、森鴎外の短編小説である。一般的に、原稿用紙10枚から80枚ほどの作品を指すが、果たして舞姫は短編小説なのだろうか。私はとても長く感じた、それは使われている単語や言い回しを、自分が知らなかったからである。『舞姫』を読むことによって、自分の無知に気づくことができたが、気になったことがある。それは、「森鴎外は作品を精神病で片づけてよかったのか」という事である。『舞姫』には登場人物が少ないため、一人一人の心情や設定が細かく示されており、読者はそれぞれの登場人物に感情を移入することで、作品を深く理解し、楽しめると思う。だから読むのに時間がかかってしまう。しかし私は、この作品のエンディングに違和感を覚えた。なぜならば、とてもあっけない終わり方だったからである。

  太田豊太郎はドイツへの国費留学生であり、そこでエリスという少女に出会う。その後二人は同棲を始めた。そして豊太郎は、エリスの生活費を出すために、新聞社のドイツ駐在通信員になると、いう尽くし具合である。出会ってすぐの外国人少女にここまでするという所で、豊太郎の心理を考えることができる場面でもある。そして豊太郎は、旧友である相沢に再会し、彼の紹介で大臣のロシア訪問に帯同し、信頼を得ることができた。そして帰国の話が出てくる。豊太郎は、名誉のために身ごもっているエリスを置いて日本に帰ってしまうのか、愛するエリスとドイツでひもじい生活をするのか、様々な葛藤があり、読者も自分に置き換えて考えたはずだ。森鴎外は、何故豊太郎がエリスを連れて日本に帰るという選択肢を作らなかったのか、なども考えられる。

 このように、場面場面で読者は、次の展開を考えられるように出来上がっていたが、いざ終盤に差し掛かり、豊太郎に決断の時期が迫り、エリスも豊太郎にも葛藤がみえる場面で、森鴎外は、エリスが精神病にかかり、豊太郎が日本に一人で帰国するという結末を書いた。私は、この結末に、どうしても納得がいかない。読者は二人の葛藤から、いくつかの結末を予想したはず、わくわくしながら読んでいたはずだ。そこでエリスが精神病にかかるというのは、あまりにもあっけないのではないだろうか、『舞姫』は鴎外の人生と重ね合わせてあり、鴎外本人もドイツ留学時代にドイツ人女性に出会っている。そして、その女性は鴎外の帰国後に一度来日しているというのだ。ここで鴎外の体験と『舞姫』で違いを作った鴎外の心境を考えた。鴎外はあえてこのような終わりにすることで、ドイツのような個人主義のような考え方は、まだ日本には通用せず、近代化が進む日本に残る伝統やしきたりを大事にする文化には、まだ逆らえない、という苦悩を示したかったのではないかと思う。だから、このようなあっけないエンディングになってしまった、と考えると納得がいく。以上のような理由で、鴎外は作品を精神病で片づけてもよかったのだ、と結論付けることができる。

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