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23 パパからの掟
Posted 04/03/2018 09:09AM

この地図を見てごらん。これは日本で一般的に見られる世界地図だけれども、他の人からしたらとても奇妙に見えたりする。だから、人によって考え方も価値観も変わってくるんだ。その事を覚えておくんだよ。」

 

私の夫は生徒によくこう言っていたという。はかなり評番が良かった高校教師だった。かなり面倒みが良かった。それは私も同じ学校で働いていたのでよくわかる。

 

私がかずと結婚した頃から、彼のお腹には大きなあざがあった。それも、いつ出来たのかよくわからず、色んな病院に行って診察を受けても、ただのあざと診断され、ほっといていても大丈夫だろうとのことだった。だから、夫はなにをすることなく、そのままほっといておいていた

 

ある日。何年経っても、あざが消えず、むしろ大きくなっていったことに違和感を覚え、かず再び病院に行った。

「このあざ、何年経っても消えないのですが、大丈夫でしょうか?」

 

「これはすぐに皮膚科の専門医に診てもらって下さい。」医師はそう言ったという

 

そして、皮膚科で精密検査をしたところ、皮膚ガンだということがわかった。

「でもこれぐらいのがんなら、すぐに取り除けば大丈夫でしょう。」医師にそう言われたそうだ

そして、なんとか早期発見が出来た為、一命を取り留めた。

 

そんな時に私の娘が生まれた。かずは私が生まれたことが何よりも嬉しく、幸せそうだった毎日のように娘の面倒をみたり、夜泣きが激しいと一緒にドライブに行っていた。

 

しかし、悲劇はまた起きた。ある日の朝。私は夫の首が異様に腫れているに気がついた。

「あなた、どうしたの。その首。」

「なんだか、朝から痛くてね。病院にでも行って来ようかな。」

そう言って、かずは病院に行った。

がんが再発し、首のリンパ節に転移していたのだった。

 

 

「なんで、子供が生まれたという時にまた再発してしまうんだ。」かずは怒りとくやしみのあまり、毎日のようにひどく声を荒げているのが部屋から聞こえた。私もとても悲しくなった。出来るなら私のからだと交換してほしいとさえ思った。

 

それでも、かずは家族の前では心配をかけまいと平静を装っていた

 

それからというもの、かず毎月のように検査に行った。すると、ある日医師からこう言われたという

 

「落ちついて聞いて下さい。あなたの余命はあと半年、少なく友達あと1年しかありません。」

 

突然、話でかずそのことを告げた。その方が冷静にしゃべれる気がしたからだろうと感じとった

 

「落ちついてきいてくれ。俺の寿命はあと半年しかない。」

 

「え、あなた、なにを言っているの?」

 

「いや、本当なんだ。これは。すまない。」

 

は驚きを隠せなかった。元からがんがあったことを聞いてはいたものの、いざ本人からそのことを聞くと、簡単に受け入れられるものではなかった。

 

「残りの人生、少しでも長くあやみといてあげて。」私はそう言った。

 

かずは仕事を休み、抗ガン剤治療を始めた。少しでも娘と時間を過ごすことに専念した。抗ガン剤の副作用によって、極度の吐き気と頭痛がかずを襲う毎日が続いた。それでも、かずは入院せず、自宅での治療を続けた。

 

そして、がん宣告を受けてから1年後、かずはかえらぬ人となった。

 

一年半年後。私はパソコンで書類を探していた。すると、ある1つのファイルが目に飛び込んできた。『これから有意義な人生を送る為のパパからの20の掟』と書かれていた。ファイルを開いてみるとこう書かれていた。

 

『まみへ。パパはもうこの世界にはいない。でも、パパから伝えておきたいことがある。今のあやみは生きていくうえで大切なこととか、価値感について色々考え始めてきている年頃だと思う。そこでこれからの人生において大切なことを教えておきたい。

1. いつも礼義正しく、お礼を言うことを忘れないこと。他人はあやみのマナーの良さをみてどうあやみと接すればいいのかを探っている。そのことを忘れないで。
2. 困ってるひとがいたら、必ず助けてあげること。あやみがもし同じ場面にあった時、必ず周りから助けてくれるはず。
3. 自分の意見はちゃんと言うこと。はっきりいわないと他のひとに流されたり、自分がちゃんともてなくなる。
4. 怒りたくなっても、すぐに口に出さずに冷静に考えてから口に出すこと
5. お金の無駄使いはしないこと。自分が将来役に立つようなことにお金を使いなさい。

20. ママを大切にしてあげて。ママはいつでも、あやみが困ってた時に助けてくれるはずだ。

ちゃんとあやみの成長を見届けられなくてごめんね。でも、あやみのことはずっと天国から見守っているからね。               パパより』

 

そこにはかずの真面目な性格が滲みでていた。これを読んだ時、私はハッとした。そういえば、かずは仕事をやめたというのに、時々夜遅くまでパソコンに向かっていた。私が夫の健康を考えて、何度も止めても、彼は止めようとはしなかった。それはあやみのこと思ってだったのかと。おそらく、かずはこれを通しあやみに立派な大人になってほしいと思っていたのだろうと感じた。自然と私の頬に雫がしたたれ始めた。今までにないぐらいに目頭が熱くなり、次第に雫の粒が大きくなっていった。

「かず。」

 

かずが死んでから5年が経った。あやみは小学2年生になった。あやみは少しづつそのかずの教えを理解出来るようになった。今でも一緒に読んでいる。

 

「パパは今もこうしてあやみのそばにいるんだよ。」

 

私はいつもそうやってあやみに語りかけている。

いつかかずの思いが届きますように。

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